- 10月
- 2024年11月
2年ほど前からSDGsの標語の元に環境負荷への対応が求められています。そんななか、樹脂としてもさまざまな環境対応製品がリリースされています。
CO2の削減、環境に対応した樹脂というのは、大きく分けて2つあります。
- 非石油系、植物由来の樹脂
- 生分解性樹脂
片方だけの機能もあれば、両方の機能を持っている樹脂もあります。ただし、なかなか広く使われているポリカーボネイト(PC)や、ABSといった石油系樹脂の代替わりにはなり得ていません。現状では用途に応じて使い分けたりして使用されています。
最近は米からできるプラスティックなどが出ていますが、米だけでなく、とうもろこしなどのデンプンから生成される樹脂があり、これらはPLAなどと呼ばれています。このPLAは生分解性もあり、大きな注目を集めています。
成形性も高く、歪みや反りも小さく、強度もある優れた樹脂ではありますが、反面、一般的には非常に熱に弱く、50度程度で変形が始まります。スマホのケースなどで使用した場合、普通に使用しているだけで簡単に変形してしまう恐れがあることになります。
そこで現状はこのPLAをポリプロピレン(PP)などと混ぜて使用することが多いようです。PLAの配合を減らせば減らすほど安定した品質の樹脂ができるという、なんとも歯がゆい現状です。
雑貨店でも環境に配慮した樹脂を使用して食器を作りました、というものがありますが、よくよく成分表を見てみると、PLA10%、PP90%などと、ほとんど入ってないではないか、という割合になっているものがあります。実際問題、PLAが多すぎれば食洗機に入れただけで変形してしまい、使い物にならないと思います。
生分解性の罠
実際にPLAを生分解するのに必要な条件は厳しく、単純に土に埋めておけば分解されて土に帰ることはありません。
実際には50-60度の熱をかけて、大量のバクテリアが生育している土壌に埋め込む必要があります。これは腐葉土などの堆肥のなかなどに埋めればその体積に応じて数ヶ月か数年で分解されるかもしれないというレベルです。これが廃棄されて海に流れ込んでしまっても海の中ではずっと分解されずに残り、いわゆるマイクロプラスティックと変わらない問題が残ります。
これであるなら、PETなど、リサイクル性の高い樹脂を使った方が環境負荷が低い、ということになります。
また、生分解性が高い、ということは人間の皮脂や汗、環境にある雑菌類でも簡単に劣化することを意味します。手で握っていたらすぐにベタベタして分解が始まったのですぐに廃棄、もしくは店頭で在庫している間にも劣化して廃棄、となってしまうと、結局環境にとって良い樹脂とはなんだろうと大きな疑問が出てきます。
それでも前に進む環境負荷対策
それでもこのままでいいのか、ということはなく、更なる技術革新を進め、少しでも環境負荷の低い素材を使っていきたいと考えています。
現在、環境省が推している素材として、セルロースナノファイバーという樹脂があります。生分解性はほとんどないと思いますが、石油を一切使わず、植物の繊維が主に使われている樹脂になります。
石油系樹脂と似たような特性を持ち、代替えになりうると期待されています。
私たちも実のところセルロース系の樹脂を使おうと開発を進めていましたが、どうしても現状では成形性が悪く、表面の縮み、薬品による変性、異素材との密着性の低さなどの問題が噴出し、急遽取りやめた経緯があります。
実際はデザインなどで乗り越えることができると思いますし、今後もっと環境に配慮した製品に対する購買意欲も上がって来れば、多少の瑕疵があろうともビジネスに乗せることができるかもしれません。引き続き企業として取り組んでいきたいと思います。
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このブログを書いたスタッフ
開発
ようへい
開発、生産工程に関わる。家具メーカーのセールス時代に星川と出会い、意気投合してトリニティに転職。製品開発で中国に何度も通ううちに辛い食べ物に覚醒。隙があれば食べ物にハバネロソースをかけてしまうため、周囲から嫌がられている。
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